はじめまして(信念:身体は自然と繋がっている)
動物鍼灸専門の獣医師小淵朝子です。自然や心身のバランスを意識して統合的に判断する東洋医学に惹かれ、日本に古くからある鍼灸を学びました。
獣医学は農とは切り離せない関係にあるという思いがあり、獣医学の傍ら農業にも従事しています。
農業を志したきっかけは「わら一本の革命」(福岡正信著)との出会いでした。福岡氏は自然農の草分け的存在です。彼の『人間というものは、何一つ知っているのではない、ものには何一つ価値があるのではない、どういったことをやったとしても、それは無益である、無駄である、徒労である』『人知・人為は一才が無用である』という言葉に当時妙に納得したことを覚えています。
私も戦前の農業に倣い、鍬と鎌、ショベルで借りた休耕畑(1反2畝分)を開拓し、雑草と闘わず無農薬で野菜を育ててみています。この畑は傾斜地で元々は先人の知恵に則った段々畑だったのでしょうが、近代ではトラクターなどの機械を入れるために、畝を等高線と直角に造られていました。そうすると間違った人為が働いていますから、福岡さんの言うような楽な農業はできず、傾斜の高いところの土は乾燥して痩せて何も実りません。ですから私は段々畑に治すべく、ショベルと鍬でまた人為を働かせています。その人為の中でも日光、土、風、水、植生といった自然を観察し、野菜の特性を理解しその強さを引き出さないと上手くいきません。これは動物の治療にあたるときも同じことなのです。
少し話がそれますが、昔の日本は、農業、食、健康、ヘルスケア、生死、和裁などの基本は我々の一般庶民の先祖にとって家庭に根ざしたもので、外部の誰かに全面的に託すものではありませんでした。今は経済活動が盛んで、これら生活の技術を外部に委託し、時間的には解放されたようにみえます(結局のところ料金の支払いのために多くの労働をこなさなければならないので、厳密に言うと時間的な余裕は生まれないのですが)。しかし便利で自由になった一方、ペラペラな根無し草に成り下がり、生きる力が削がれているのではと不安になることもあります。これらの技術が少しでも家庭に戻ってきて、各人が過去のように頑丈な日本人と動物になれますように、その一助になりたいと願って日々精進してまいります。